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2025.5.12
「収納は多いに越したことはない」
収納が不足して、部屋の中に物があふれている状況を想像すれば、多くの方がそうお感じになることと思います。
しかしながら、収納を増やせば当然のことながら建築コストも上がります。
収納を増やすということは、その分だけ面積が大きくなるということでもありますから、
単純にたくさん設ければよい、というものではありません。
また、人間には「空いているスペースがあると、そこを埋めたくなる」という心理的傾向もあります。
そのため、収納をたくさんつくったとしても、その余白に合わせて物が増えてしまう可能性が高く、
結果として無駄なものが増えてしまうことにもつながります。
言い換えれば、物が増えるということは、
「無駄な支出が発生している」可能性が高いということでもあります。
本日は、そうした背景をふまえながら、
「収納」に対する弊社の考え方についてお話しさせていただきたいと思います。
この考え方をご理解いただくことで、
無理にコストをかけることなく、十分な収納量を確保した家づくりがしやすくなるのではないかと考えております。
ぜひ最後までご一読ください。
■「床」ではなく「壁」で考える
収納にどれだけの物を納めることができるかは、
面積、つまり「床の広さ」以上に、「壁の面積」に大きく左右されます。
たとえば、2帖分の収納スペースがあるとします。
1.69m × 1.69mという大きさですが、収納としてどれだけ機能するかは、
その4面ある壁のうち、何面を使えるかによって変わってきます。
仮に2面しか使えない配置にした場合、棚1段あたりの有効幅は1.69m × 2面=3.38m。
これに対して3面を使えるような入口設計にすれば、
1.69m × 3面=5.07mと、1段あたりの収納量が大きく向上します。
このように、収納を考える際は単純な「広さ」だけでなく、
その壁をいかに有効活用できるかという点にも着目していただければと思います。
こうした視点をもっていただければ、より正確に収納量を把握し、
無駄の少ない収納計画を立てていただけるのではないでしょうか。
■回遊動線は盲点になることも
この考え方を踏まえていただくと、
最近人気の「回遊動線(通り抜けできる動線)」についても、
一つの注意点をご理解いただけるかと思います。
通り抜けできるということは、裏を返せばその壁面が使えなくなるということでもあります。
先ほどの2帖の収納の例で言えば、4面ある壁のうち、
1面しか使えない状態になる可能性があります。
つまり、実質的に1帖分の収納と変わらない容量になってしまうということです。
しかしながら、2帖分の広さを確保するためには、1帖分よりも30〜40万円ほど
余分にコストがかかっていることになります。
したがって、回遊動線を取り入れる場合には、
その利便性だけに着目するのではなく、
収納量への影響といったデメリットも併せて考えていただければと思います。
■収納に限らず、部屋にも「壁」が必要です
この考え方は収納に限らず、居室そのものにも当てはまります。
例えば、ある部屋の4面の壁のうち、
1面には入口、もう1面にはクローゼット、
そして残り2面にはそれぞれ窓を配置したとします。
すると、その部屋には家具を置いたりコンセントを設けたりできる
「自由に使える壁」が、ほとんどなくなってしまうのです。
このような間取りになると、物の配置が難しくなるだけでなく、
模様替えがしにくくなったり、コンセントの位置が非常に限られてしまったりと、
日常生活にも支障をきたす可能性があります。
そのため弊社では、間取りを考える際には「いかに壁を多く確保するか」という点も重視しています。
壁が増えることで収納計画が立てやすくなるだけでなく、
耐震性や断熱性の向上にもつながってくるためです。
もちろん、そのためには最小限の窓でも十分な採光と通風が確保できるよう、
設計の工夫が必要となってまいります。
少々話が広がってしまいましたが、
本日お伝えしたかったのは、収納は「床面積」ではなく「壁面積」が重要である、という点です。
今後、間取りや収納計画を考える際の一つの指針として
ご参考にしていただければ幸いです。